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内国語と外国語


フィンランドでは,外国語 (vieras kieli) に対する概念として, 「内国語(kotimainen kieli) ということばがある。これは,フィンランド国内で古くから話されている土着の言語という意味で,フィンランド語,スウェーデン語,サーミ語 (ラップ語) の3つがフィンランドの内国語である。

日本語以外はすべて外国語という建前の日本では,東京にある国立国語研究所 (国研) が日本語 (=国語) だけを研究することがあたりまえとされている。ヘルシンキにある 「フィンランド内国語研究センター」 が,上にあげた3つの言語を研究対象とする国立の研究所であるということを聞いて,びっくりする人も多いであろう。もし同様の研究機関が日本にあるとすれば,日本語のほかにアイヌ語や琉球語も研究することになっているはずだからである。

「日本語を母語として話す」 = 「日本人」 という暗黙の等式がはびこっている日本では考えにくいことだが,フィンランドでは,フィンランド人には 「フィンランド語系」 もいるし 「スウェーデン語系」 もいるし 「サーミ系」 もいるという考え方がごくふつうに受け入れられている。日本にあてはめれば,「日本語系日本人」 「琉球系日本人」 「アイヌ系日本人」 がいると考えることに相当する。もちろん,この場合の 「日本人」 とは,今日 「日本国」 と呼ばれている国家の領土内の土着の人々という意味である。


更新日 2009/07/21